どうも。今回は、マーケティング基礎理論の一つである、マーケティングミックス(4P)が、4Eという新しい概念に変わりつつある件について解説したいと思います。
そもそも4Pというのは、Product、Price、Promotion、Placeの頭文字から来ているコトバで、商品やサービスをお客様に届けるために考えるべき要素を示したフレームワーク(考え方の枠組み)です。
ところが、近年のビジネスを見ていると、4Pでは説明できないようなマーケティングを行っている企業が増えてきています。
そこで、新しいフレームワークとして4E(Experience、Exchange、Evangelism、Every Place)が使われるようになりました。
この記事をお読みいただくことで、マーケティングの代表的フレームワークである4Pと、新たなフレームワークである4Eの2つを、同時に理解することができます。
※本記事の執筆にあたり、下記書籍を参考にさせていただきました。
本書は、D2C(Direct to Consumer)と呼ばれる新しいビジネスモデルを紹介したものですが、D2Cの文脈で4Pから4Eへの移行の必要性を説いています。
4Eが活用されるビジネス事例と共に勉強してみたいという方は、是非手に取ってみてください。
4P(マーケティングミックス)とは何か?
繰り返しとなりますが、4Pは “Product、Price、Promotion、Place”の4つの英単語の頭文字をとったコトバです。
マーケティングミックスとも呼ばれます。
Product:商品
Price:値段
Promotion:広告・宣伝
Place:場所・チャネル
それぞれを簡単に解説しますね。
Product:商品
言葉の通り、どんな商品を売るかを考えなさい、ということです。
この場合、カタチのある商品だけではなく、サービスもProductに含まれます。
Price:値段
商品を、いくらで売るのかを考えなさい、ということです。
Promotion:広告・宣伝
商品を、どうやってお客さんに知ってもらうのかを考えなさい、ということです。
素晴らしい商品を、適正な価格でお店に並べればたくさん売れる、と思ったら大間違いです。
お客さんがその商品の存在を知らなければ買うかどうか迷うこともできません。
企業がテレビコマーシャルを打ったり、近所のスーパーが新聞にチラシをはさむのも、すべて「知ってもらうための努力」です。
Place:場所・チャネル
商品を、どこで売るのか考えなさい、ということです。
そんなのお店で売るに決まってるじゃん!と思われるかもしれませんが、商品を売る場所は店先だけではありません。
オンラインストアでの販売もできますし、直接お客さんの家の玄関まで行って売る(訪問販売)も可能です。
また、店頭販売するにしても、店舗を駅近に構えるのか、郊外に建てるのかでお店に来てくれるお客さんは変わります。
ちなみにチャネルとは、「お客さんへ商品を届けるための販売経路」のことを指す用語です。
マーケティング理論ではよく使われますので、覚えておきましょう。
4Pをどうやって使うのか?
4Pのフレームワークを使うには、
4Pのフレームワークを使う上で大切なことは、「4つのPで整合性を取る」ということです。
4つのPをそれぞれ単独で考えてしまうと、売れるものも売れなくなってしまいます。
例えば、あなたがラーメン屋を経営したいと思っている、としましょう。
4Pのフレームワークを使って、以下のようにマーケティングプランを立てたとします。
ターゲット顧客は、年収2,000万円以上の富裕層です。
Product(商品) :高級具材をふんだんに使った贅沢ラーメン
Price(値段) :贅沢ラーメン1杯 2,000円
Promotion(広告) :食べログとぐるなびに掲載
Place(場所・チャネル):東京新宿駅東口
そもそも、高級ラーメンが富裕層のニーズを捉えているのか? という疑問は脇に置くとして、
4Pの整合性をチェックしましょう。
贅沢ラーメンに2,000円という価格設定は、高級路線としては合致しています。
しかし、食べログやぐるなびでの広告は、贅沢ラーメンというコンセプトに合っているでしょうか?
9割以上が「1杯1000円前後のラーメン」が並ぶ中、2,000円のラーメンは明らかに悪目立ちします。
安いラーメンを食べたかった顧客に「高いくせにそこまで美味しくない」と不本意なコメントを残されるかもしれません。
さらに、東京新宿駅東口よりも例えば「銀座」とか「自由が丘」とかの方が、高級路線に合致したチャネルとなるでしょう。
《4Pを使ったマーケティング 改善案》
Product(商品) :高級具材をふんだんに使った贅沢ラーメン
Price(値段) :贅沢ラーメン1杯 2,000円
Promotion(広告) :住宅街にてポスティング、周辺の高級レストランにチラシを置いてもらう
Place(場所・チャネル):自由が丘駅 周辺
このように、4Pにて考えたマーケティング戦略が、全体として一貫性があるかどうかを確認してください。
Web型マーケティングの潮流と4Pの限界
ここまで4Pについて説明してきましたが、このマーケティング理論が徐々に通用しなくなってきているのも事実です。
その理由は、主に3つあります。
1.顧客とのコミュニケーションが一方向型から双方向型へ
そもそも4Pのフレームワークは、すべて「売り手側(企業)」から見た視点で考えるものです。
従来は、企業が発信した情報をお客さんが受け取って商品を買うという、企業→お客さんの一方通行のコミュニケーションだけでした。
しかし現在は、お客さんは他のお客さんの評価(口コミ)を参考にして商品を買います。
また、お客さんからのレビューを受け取り、それを企業が商品の改善に役立てるといった動きも増えています。
つまり、商品を売り込むのは企業だけではなくなり、いかにお客さんと繋がるか(双方向のコミュニケーション)が重要となりました。
2.「モノを買う」から「コトを買う」へ
シェアリングエコノミー(UberやAirbnb)の台頭から分かるとおり、モノを所有するよりモノを共有するという消費行動にシフトしてきています。そうなると、車1台100万円のような従来の価格の付け方が通用しなくなります。
「車は100万円くらいする高価な品物なんだよ」という考えから、
「車に乗って週に一度外に出かけることって100万円も価値あるの?」という考えに変わっているのです。
3.インターネットの普及で「どこでも買える」時代
先にも少し書きましたが、インターネットの普及で誰もが手軽に「どこでも」モノを買ったりサービスを利用できるようになりました。
そのため、「商品をどこで売るか」にデジタル空間の概念を持ち込む必要が出てきました。
新宿で売るか?銀座で売るか?の議論に、Amazon.comで売るか?楽天で売るか?という選択肢が入ってきたイメージです。
4Eとは何か?
4Eとは、Experience、Exchange、Evangelism、Every Place の4つのコトバの頭文字をとったもので、
Experience:体験
Exchange:交換
Evangelism:伝導
Every Place:あらゆる場所
となります。こちらも、それぞれについて簡単にご説明します。
Experience:体験
4Pの「Product:商品」に対応するもので、商品のみならずお客さんがその商品を使ってどんな体験ができるのかを考えなさい、というものです。
先の車の例を使えば、「車を所有する」という体験と、「車を所有せずに使う」という体験のどちらを提供するのか?、商品を”体験込みで” デザインしなさい、ということです。
Exchange:交換
4Pの「Price:値段」に対応します。4Pでは、提供する商品自体に値段を付ける、という考え方でしたが、”Product” が “Experience” に変わったことに併せて、”Price” も”貨幣と商品を交換する体験” に焦点をあてる必要があります。
少しわかりにくいと思いますが、「単に商品に見合った値段を決めればいい」というPriceの考え方が、「どこで?どのように?いくら支払うか?その値段には何が含まれているのか?アフターサービスは?、といった顧客体験を全て含めて価格を決めていく」というExchangeに変わったと捉えてください。
Evangelism:伝導
企業から発信されるメッセージだけではなく、顧客自身にメッセージの発信者(Evangelist:エヴァンジェリスト)になってもらって、商品の認知を広げてもらいなさい、という考え方です。最近、インフルエンサーという言葉が様々な場所で使われていますが、フォロワーと密接な関係を持つインフルエンサーに商品の良さを発信してもらう、という考え方もこれに該当します。
しかし、メッセージの発信者は有名人でなければならないという訳ではありません。有名人であれば宣伝効果は大きくなりますが、メッセージの質を考えると、無名だけど熱烈なファンをつくった方が良い場合もあります。
Evangelismのためには、企業はお客さんに発信してもらうことを前提にマーケティングを考えます。例えば下記のようなものです。
-顧客にどんなメッセージを発信してほしいか?
-どんな風に写真や動画を撮ってほしいか?
Every Place:あらゆる場所
Placeに “Every” の考え方をプラスします。
つまり、現実空間(オフライン)もインターネット空間(オンライン)も全て含めて、どのチャネルから商品を提供するか?を考えなさい、ということです。
4Eをどうやって使うのか?
それでは、4Eのフレームワークの適用例を、実例と共に見ていきたいと思います。
アメリカにWarby Parkerという眼鏡店がありますが、彼らの成功は4Eのフレームワークでうまく説明できます。
Experience(体験):
オンライン販売では自宅に試着用メガネが届く。
実店舗では図書館を思わせる内装で世界観を表現。買ったメガネをかけながら、ゆっくり読書ができるスポットを紹介。
Exchange(交換):
家でメガネの試しがけ、実店舗での購入体験を含め、メガネ1本$100以下で提供。
Evangelism(伝導):
思わずシェアしたくなる実店舗の世界観に加え、オンライン販売でも10回近くの顧客接点を用意(メール配信)。
直接会わないのに、お客さんとの親密な関係を築く。
Every Place(あらゆる場所):
自宅でも実店舗と同じようにメガネを試し、納得してから購入。
こうして見ると、4Eのフレームワークを使って編み出されるマーケティングプランは、すべて「お客様目線」のものであることがわかります。
まとめ:4Pと4E
いかがでしたか?
今回は、4Pと4Eのフレームワークについてご説明しました。
この2つのフレームワークを見ると、昨今のビジネスの潮流が見て取れます。
4Pは、マーケティング理論の基礎である理論で、「企業が顧客に対していかに商品を届けるか」、という目線に立っています。
これは、たくさん作ってたくさん売るという大量消費型の社会にうまく当てはまる理論です。
それに対して4Eは、徹底して顧客目線に立って商品をデザインし、お客さんがどんなことを思ってメッセージを発するのかに着目し、モノではなくコトに価格をつけます。
これは、作っても売れない成熟した経済(日本のような)において、大きな力を発揮します。
「ビジネスの理論を学ぶ上では、ベースとなる理論と今のビジネスの流れの両方を理解することが重要である」ということを教えてくれるテーマでした。
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