経営戦略論のほとんどはレッドオーシャンを想定している

経営戦略

ブルーオーシャン戦略とは、「競争相手のいない未開拓の市場(ブルーオーシャン:青い海)を想像するための戦略」を指します。

未開拓の市場を見つけた暁には、既存市場(レッドオーシャン)では得られないような高い収益性を得ることができます。

競合を相手に消耗戦を継続するよりは、思い切って新しい市場に出て行きなさい、という教えです。

これは、フランスの大学:INSEADの教授二人が提唱した理論で、ご存知の方も多いかと思います。

しかし、経営戦略論のほとんどは、ブルーオーシャンではなく「レッドオーシャン」を前提としていることにお気づきでしょうか?

有名なファイブ・フォース分析も、3C分析もSWOT分析も、すべてレッドオーシャンを前提にしています。

つまり、どれも「今目の前にある市場でいかに優位に立つか」を考えるフレームワークであり、ブルーオーシャンに飛び出そうとするとそれらは途端に役に立たなくなります。

この辺りを混同してしまうと、iPhoneやiPodに代表される業界を刷新するような革命的プロダクトを送り込もうとしているにもかかわらず、レッドオーシャン的戦略から抜け出すことができません。

これは、MBAで経営戦略論の基礎を学んだ私が、ブルーオーシャン戦略を勉強したことで得られた気づきです。

本記事では、ブルーオーシャン戦略自体を深掘りすることはせず、経営戦略論を学んでいく上で押さえておくべきブルーオーシャン戦略とレッドオーシャン戦略の違いをお伝えします。

経営戦略論のほとんどは、実はレッドオーシャンを想定したもの

言われてみれば当たり前のことなのですが、経営戦略と言われるもののほとんどは、今現在、企業が置かれている状況(市場環境)や競合相手、今相手にしている顧客、あるいは企業内部の状況を分析して、最善の一手を探すものとなっています。

経営戦略論のルーツは軍事学にあり、戦争における戦略というのは、まさに目の前にいる敵や目の前にある戦場に対していかに振舞うかを考えます。

軍事学でいうところの敵軍や戦場は、ビジネスにおけるライバル企業や市場に置き換えることができますので、それも頷けますね。

その結果、目の前の敵や市場を無視した戦略論、つまりブルーオーシャンへ出ていく戦略というのは、軍事学にはありませんから、経営戦略論も自ずと、今目の前にある戦場(多くの場合、それはすでにレッドオーシャンとなっている)を想定したものになっています。

一般に、経営戦略論をガリガリ勉強したMBAホルダーや外資系コンサルタントは、レッドオーシャンでいかに勝つかという戦略を得意とします。

彼らの使いこなすSWOT分析やファイブフォース、バリューチェーン分析などのフレームワークも、すべてレッドオーシャン用のツールなのです。

つまり、それらのツールは既存の市場でいかに競合相手に対する優位を築けるかというレッドオーシャン的戦略には役に立ちますが、新規事業の立ち上げや、既存の市場を捨てて未開拓の市場へ飛び出す場合は、それらとは異なるアプローチが必要になってきます。

ブルーオーシャンに飛び出すために必要な思考の変革

残念ながら、ブルーオーシャン戦略に適したフレームワークやツールは数が限られています。

1つは、戦略キャンパス(ストラテジック・キャンパス)というものがあります。

https://www.similar-web.jp/blog/archives/8072 より引用

詳細な説明は、本稿では省略しますが、横軸に「買い手に提供する価値要素」を並べ、縦軸にその価値の高さをプロットしていきます。

レッドオーシャンにある複数の企業というのは、買い手への価値要素とその度合いが似通っている場合が多くあります(だからこそ、泥仕合化します)。

ブルーオーシャンに飛び出すために、他の企業がまだ提供していない価値要素を見つけ出していきます。

戦略キャンパスを作成するにあたっては、ERRCグリッドというものを意識します。

Eは”eliminate(取り除く)”、Rは”reduce(減らす)”と “Raise(増やす)”、 Cは”create(想像する)”です。

価値創造には、今ある価値を思い切って捨てる、増やしたり減らしたりする、あるいは新しく作ることが必要です。

まとめ:ブルーオーシャンに飛び出せる人材に希少価値がある

私は、新規事業戦略を立てる際、半ば条件反射的にお決まりのフレームワーク(3C、ファイブフォース、SWOT分析 等)を片っ端から埋めていった後、「さて、これからどうする?」と手詰まっていました。

当社の置かれた状況は理解できましたが、これからどのような市場に飛び込んでいけばいいのか、その勝ち筋が全く見えてこなかったのです。

「経営戦略論は、レッドオーシャン戦略を前提としており、目前の戦場で戦ってかつ方法と、勝てる新しい戦場を探す方法は全く違う」という気づきを得たお陰で、フレームワークを誤って利用していることに気づきました。

経営戦略論の大切な部分であるにもかかわらず、あまり認識されていない事実であると感じたため、共有させていただきました。

なお、レッドオーシャン戦略は研究され尽くしてるのに、ブルーオーシャン戦略におけるフレームワークは現時点で数えるほどしか存在しません。

有名コンサルファームや投資銀行、ビジネススクール等が、レッドオーシャンで戦える人材を量産しているのに対して、ブルーオーシャンで戦える人材というのは希少です(それ故に注目が集まるのですが)。

経営戦略論を勉強していて、「こんなの私よりも能力や経験に長けたエリートが完璧な戦略立てるんだろうな」と無意味さ(無力さ?)を感じた時は、視点を切り替えて「人材のブルーオーシャン」に飛び出してはいかがでしょうか?

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