在宅ワークで最近話題のzoomとは?【ビジネスの視点で解説】

企業研究

新型肺炎が世界的に流行していて、大変なことになっていますね。感染の拡大を防ぐために、様々な企業が仕事を在宅ワークに切り替えています。

そんな中、一躍注目を浴びるようになったのが、”zoom” というビデオ会議アプリです。読者の方々の中にも、最近初めてzoomを使うようになったという方も多いのではないでしょうか?

Google Trendsで検索トレンドを調べてみると、下のようにウイルス蔓延から在宅ワーク本格化を境に、検索頻度が一気に増えているのが分かります。

ワード"zoom"の検索トレンド(2020年3月20日時点)

zoom は、2011年に起業したアメリカ:シリコンバレーのスタートアップ、Zoomビデオコミュニケーションズが提供するアプリなのですが、 企業としてもうなぎ上りに成長しており、投資家やビジネスに精通した方々を驚かせています。

今回は、ビジネススクールに通う私が、”ビジネスの視点から” zoom 躍進のヒミツを紐解いていきたいと思います。

zoom とは?Skypeとの違いは?

ビデオ会議用のアプリと聞いて、最初に思いつくのは、Skypeではないでしょうか?

Skypeは、2003年に設立されたSkype社の提供するビデオ会議アプリで、現在はMicrosoft社に買収されています。

無料でかけられるビデオ通話ということで、世の中に浸透しました。オンライン英会話等でも活用されていますね。

zoomとSkypeのサービス比較については、下記サイトにキレイにまとめられてますので、参照ください。

Web会議にはZoomがいい?Skypeとの違いとメリット・デメリット(Turbine Interactive)

 

おおまかには、zoomはSkypeと比較して、下記の点で優れています。

  • ビデオ会議の接続安定性が高い
  • 会議に参加するためにアカウントを作成する必要がない
  • 同時に接続できる会議参加者の数が多い
  • 待機室(Breakout Room)に参加者が各自で入って行くイメージ → 電話が繋がらない、のストレスが無い

私の個人的な感想としては、

音や画質がキレイ、通信が安定している、オンラインでの資料共有がしやすい、録画ができる(有料会員のみ)

このあたりが、気に入っているポイントですね。無料で使えますので、まだの方は是非試してみてください!

zoomの使い方

zoom の使い方については、Zoom Academy Japanさんにて詳細に解説されています。

ご参考までに。

Zoomマニュアル|Zoom Academy Japan

企業としてもスゴイ!Zoomビデオコミュニケーションズ!

それでは、導入を終えたところで、本題に入っていきましょう。まず、企業概要を以下にまとめます。

企業名 Zoomビデオコミュニケーションズ
設立 2011年 (2019年にIPO済み)
CEO エリック・ヤン氏
本社 アメリカ カリフォルニア州 サンノゼ
社員数 1,958名(2019年)

参照 Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/Zoom%E3%83%93%E3%83%87%E3%82%AA%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%8B%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%BA

 

レッドオーシャンのビデオ会議市場に風穴

ビデオ会議市場というのは、Skypeをはじめとして数々の競合がしのぎを削っている業界です。

世界的にみると、Skypeが40%弱のシェアを占め、アメリカの大手IT企業であるシスコシステムズ、ポリコムと続きます。
その他にも同様のサービスを提供する会社が多数存在していて飽和状態にあり、新参者のZoomとしては苦戦を強いられるだろう、という予測が一般的です。

そんなレッドオーシャン(競争が激しくて利益を出しづらい業界)に割って入って、並居る競合を押しのけて成功を収めているのがZoomです。

CEOのエリック・ヤン氏は、実はシスコシステムズの元社員。ヤン氏はビデオ会議システムの開発に関わっていたそうですが、当時シスコシステムズが企業向けに提供していたビデオ会議サービスが、顧客のニーズを満たせていないことに気づいていたようです。

そこから、企業向けニーズに焦点を当ててビデオ会議サービスを提供するZoomの立ち上げに至ったそうです。

顧客満足を徹底追及する姿勢

レッドオーシャンでの勝ち筋は、「徹底的に競合と差別化すること」だということを、Zoomは私たちに教えてくれます。

ヤン氏は、顧客がどんなサービスを求めているかを理解していたため、その顧客満足を徹底的に追求する戦略を取ります。

まずZoomは、ビデオ会議を頻繁に使うような大企業、ヘルスケア企業、そして教育機関にターゲットを絞ってサービスを構築しました。

  • 画像、音声を含めた通信品質にこだわる
  • バーチャル会議に必要な”資料の共有機能”を充実
  • 会議に参加できなかった人にも共有できるように、アプリに録画機能を搭載
  • 企業でよく使われるPCアプリケーション(Microsoft, Dropbox, Salesforce等)とzoomを連携させることができる

また、40分の制限時間内であれば誰でも無料で利用できる、という点も理にかなっています。

Zoomの品質を顧客が自由に確かめることができますから、企業や教育機関の中でも「Zoom 導入に賛成」の声が広がりやすい。

「こんなに良いサービスなら、会社がお金を出して使おうか」となりますよね。効率良く有料プランへ取り込むことができます。

このビジネスモデルの成功を示す指標に、正味ドル拡大率というものがあります。

これは、「一旦サービスを使い始めた顧客が、どのくらい同じ会社の提供する他のサービスも使い始めたり、契約プランをアップグレードして多く課金するようになったか」
というものです。

例えば、月額1,000円のサービスに申し込んだAさんが、そのサービスが気に入って月額1,500円のよりランクの高いサービスに申し込んだ場合、正味ドル拡大率は150%ということになります。

Zoomのようなソフトウェア企業の正味ドル拡大率は、105〜120%が業界平均とされていますが、Zoomは正味ドル拡大率140%を達成しました!
Zoomがいかに顧客の心を掴んでいるかが分かりますね。

顧客だけでなく、社員も満足している

実は、Zoomは社員の高い職場満足度を実現した企業でもあります。

Comparablyという会社が発表した、アメリカの主要な企業における従業員満足度調査で、堂々の1位を取っています。

CEOであるヤン氏の従業員ファーストのリーダーシップ、手厚い福利厚生、共に働く人々、顧客第一の企業理念への共感などが、高い満足度の理由のようです。

驚異の粗利率8割強! スタートアップにしてすでに黒字決算

彼らの財務諸表を見て、最も驚いた点です。

下に、2019年発行のZoom Video Communications S-1報告書の抜粋を掲載します(S−1報告書は、一般の企業のアニュアルレポートのようなものと理解してください)。

Zoom Video Communication S-1(抜粋)

 

Revenueが「売上」、Cost of Revenueが「費用(直接費)」となります。2019年のデータに着目すると、売上が330,517千ドルに対して、コストがたった61,001千ドル。

粗利益(Gross Profit)が売り上げに対して8割強もあります。

「おいおい、営業利益(Income [loss] from operations)は6,117千ドルで売上の2%くらいしか残っていないじゃないか?」というツッコミが来そうですが、よく見てみると、広告費(Sales and Marketing)に185,821千ドルも突っ込んでいます。
つまり、この金額はZoom側で調整可能です。

つまり、Zoomのビジネスは相当に「儲かる」のです。
というより、しっかりと利益が残せるようなビジネスモデルをZoomが確立した、という方が正確ですね。

結果、2019年には純利益(net profit)は、7,584千ドルとなっています。
売上額と比較すると、大したことないと思われるかもしれませんが、スタートアップは事業の立ち上げのために大量の資金投資を繰り返すのが一般的なので、IPO(株式市場へ上場すること)時点で赤字なのが普通です。
そう考えると、IPOした2019年に黒字決算のZoomは・・・スゴいですよね?

加えて、財務状況も健全です。同年のS-1報告書によると、2019年時点で1.76億ドルの現金を保有しており、それと比較して借金額も小さい。
バランスシート的にもキャッシュフロー的にも健全な経営をしています。

ここまでの業績を達成できた理由はいくつか考えられると思いますが、私の推測する理由は以下です。

  • 顧客満足を徹底追求 → 利益率の高い顧客(平たく言うと、たくさんおカネを落としてくれるお客さん)を多く囲い込めた
  • 勝てる市場にターゲットを絞った売り込みと効率的な広告戦略が功を奏した
  • ムダを削ぎ落とした効率的な経営(財務諸表より推測)

ただ、まだまだ見えない部分が多いので、Zoomの強さについては継続して調査していきたいと思います。

さらに、Zoomは2019年に日本法人を設立しています。
新型コロナで在宅ワークが一気に普及した今、日本市場での彼らのパフォーマンスにも注目ですね。

まとめ:Zoomビデオコミュニケーションズから学べるとは?

本記事の要点をまとめると、以下の通りです。

 Zoomの”ビジネスの観点から見た”スゴさとは?

  • レッドオーシャンのビデオ会議市場で成功
  • 高い顧客満足度を達成
  • 社員にも優しい企業風土
  • 高い利益率を生み出すビジネス構造
  • スタートアップには類を見ない健全な財務状況

ただし、Zoomはまだ設立10年も立たない若い会社です。
さらに海外市場進出を進めていくと思いますが、世界の市場でもアメリカ市場と同様に成功を重ねることができるのかが、今後の注目ポイントだと思います。

 

以下、参考文献です。

https://www.fool.com/investing/2019/04/23/how-does-zoom-video-communications-make-money.aspx

https://www.drift.com/blog/how-zoom-grew/

https://www.cleverism.com/zoom-interview-founder-ceo-eric-yuan/

https://blog.zoom.us/wordpress/2019/10/02/zoom-employees-happiest/

コメント

タイトルとURLをコピーしました