最新IT技術に後押しされるサプライチェーン改革

テクノロジー

どうも。本日は前回に引き続き、サプライチェーンマネジメント(長いので、Supply Chain Management = SCMと略します)に関する記事を掲載します。

ビジネスにおけるSCMの重要性やその高まりについては前回記事にて語りましたが、SCM人気を力強く後押しする最新IT技術との関係性について綴ります。

ERP(Enterprise Resource Planning)で情報管理を一元化

ERPを直訳すると、「企業の資源計画」となり意味がイマイチ掴めませんが、”様々な部門に跨がる情報をすべて1箇所で管理するためのシステムのこと”、と捉えてください。

お客様に商品が届くまでの一連の流れにおけるムダを無くして最適な形に保つのがSCMの最大ミッションですが、上図にあるように一連の流れの中には数多くの部門(時には他企業のサプライヤーや卸業者)が関わるため、ムダを減らす取り組みは簡単ではありません。

例えば、工場では商品の売れ行きを予測して計画的に製品生産を行いますが、実際に商品を売るのは小売店舗です。小売店は、「今年ちょっと売れ行き悪そうだな・・・」というのを肌で感じていても、それが工場に伝わらなければ商品の作りすぎでムダな在庫を抱えてしまうことになります。さらに、工場はいつも通りの数量の材料を仕入れますので、材料の在庫もダブついてしまいます。

反対に、商品の売れ行きが思ったより好調だった際、工場および材料の仕入れ先にその情報が伝わっていなければ、「材料がまだ届いていないから商品を作れない」「商品の生産が追いつかなくて残業代が嵩んだ」のようなことが起こります。

つまり、ムダの無いサプライチェーンを実現しようと思うと、上流側〜下流側を通して情報がリアルタイムに共有されていることが不可欠なのです。

そこで導入されるのが、ERPです。1つの企業の中でも、工場は工場専用のデータベース、小売店は小売店のシステムを独自に運用しているケースは多く見られますが、ERPでそれら独立したシステムを1つのアプリケーションに差し替えます。これにより、店頭で商品が1つ売れた瞬間、工場側はその商品が1つ売れたことを把握することができます。逆に、工場側の抱える在庫数を、店舗側は逐一把握することができる訳です。

ICタグがリアルとバーチャルを繋ぐ

ERPにより一元管理のデータベースを構築した後は、現場の情報をリアルタイムにデータベースに流し込む必要があります。せっかくシステムが出来上がっても、システム上に入力された在庫量と実際に倉庫に積まれている商品の数が違っていては、データベースの意味を為しません。ただ、正確に在庫数を数えるのは手間もコストもかかりますよね。

この問題を解決するため、材料や商品の梱包一つ一つにバーコードが貼られており、それをスキャンすることでデータ入力を正確かつ簡単にしています。最近では、RFIDと高性能なバーコードリーディングシステムも開発・導入されており、複数のタグを一気に読み取れたり、商品が箱の中に入ったままでも読み取りが可能な優れモノです!

AI/IoTの力で需要予測は新たなる次元へ!

ERPやRFIDを導入し、データベース上でサプライチェーンを管理できるようになったら、いよいよその「最適化」に取り組みます。

最適化する上で考え得るファクターは数え切れないほどありますが、代表的なものは下記のとおりです。

  • 材料を工場へ納入する時期とその納入数量
  • 工場での製品生産スピード
  • 出来上がった商品の在庫量
  • 工場から店舗への出荷タイミングと一度に運ぶ商品数量
  • 商品搬送時の輸送ルート
  • 小売店の在庫量

それぞれに対してムダのない理想的な数値が決められれば、最適なサプライチェーンが完成します。しかし、そこでSCMが直面する大きな課題は、”需要予測”です。

上記の項目はすべて、需要の変動、つまり商品の売れ行きの変化に大きな影響を受けます。

さらに、商品の売れ行きというのは、実に様々な要素が影響します。

  • 外部要因: 景気、税金、季節、競合他社等
  • 内部要因:店頭での販売促進キャンペーンやWeb広告等

そして、これらの要因が影響して需要がどの程度上下するかを予測することは非常に困難です。従来は、過去の売上実績に加えて管理者の半ば感と経験を合わせて次期の売上を見積もっていました。

そこでAIの登場です。ERPやRFIDにより集積した商品の売上情報や販促情報、消費者購買行動、景気変動等その他の要素を元に、AIによる「売上予測モデル」を組み上げます。人手ではとても処理しきれない量のデータを元に精度の高いモデルを立案するのです。

AIによって組み上げた売上予測モデルに、先述した最適化のためのファクターを組み込めば、需要予測と同時に最適な生産スピードや在庫量も割り出せる「サプライチェーンのシミュレーションモデル:」が完成です。AIが最適化のための答えを出してくれる、という訳です。

ブロックチェーンで食の安全に改革を

SCMによるサプライチェーンの最適化からは少し話がズレますが、ブロックチェーン技術の適用についても記しておきます。

「ブロックチェーンとは?」については、別途記事で取り扱おうと思いますが、”ネットワークの中で分散して管理されている取引データに関する技術”と覚えておいてください。

SCMにおいて、サプライチェーン上で起こる材料や商品の取引やモノの流れに関する情報を、ネットワーク上で共有するためにブロックチェーンの技術が使われます。

例えば、とある田舎町で栽培された無農薬の野菜を都心へ出荷する農家さんを考えてみましょう。

畑から野菜を収穫した日付やその育て方(農薬の使用量や生産場所)がすべてネットワーク上に記録されていきます。出荷時間やその流通ルート、小売店の生鮮食品売り場に並ぶまで、その経緯がすべて記録されていきます。そしてその情報を見ながら、お客様は「この野菜は無農薬だし、採れてから24時間しか経っていないから新鮮ね。よし、買おう!」となります。

ここで重要なのが、このサプライチェーンに関わる人々全員で商品の流通に関する情報を所有しており、改ざんが困難である点です。これはブロックチェーン 技術の大きな特徴の一つですね。

これまでは、健康な食品の売買は「売り手に対する信用」の上に成り立っていました。〇〇スーパーのお肉は国内産だから大丈夫とか、△△商店のお野菜は農薬を使っていないから子どもに食べさせても安心、とか。もし、〇〇スーパーや△△商店がウソをついていても、確認のしようがありません。

しかし、ブロックチェーンの技術があれば、流通情報の正確さを担保することにより、その安全性を保証することが可能です。

実際に、消費者からの食品に関する正確な情報をもっと開示してほしいというニーズは高まっており、アメリカの例で言うと、2018年の調査で「流通情報や生産に関する情報がしっかりと開示された食品を買いたい」と答えた消費者の数が、2年間のうちに35%も上昇したそうです。

https://cointelegraph.com/news/blockchain-storage-offers-security-but-leaves-data-transparent

大手食品メーカーも、ブロックチェーン技術を自社サプライチェーンに適用する試みを着々と進めています。

カスタマーサービスもSCMの一部です

忘れられがちなのですが、カスタマーサービスもSCMにおいて重要な役割を果たします。商品を売りっぱなしでそれで満足している企業の成功例は少ないでしょう。顧客からの声に真摯に耳を傾け、商品のデザイン改善に役立てたり、商品の品質管理をより厳格にしたりすることは、SCMの重要な仕事です。

おおよその企業は、コールセンターを設けてお客様からの取り合わせに対応していますが、この手続きを大きく効率化させるのが、AIチャットボッドです。お客様からの要望をうまく取りまとめた定型の応答で処理することにより、コールセンターの待機スタッフ数を削減できる上、処理も正確です。

まとめ:最新IT技術に後押しされるサプライチェーン改革

いかがでしたか?今回は、最近のトレンドとしてSCMに活用される技術とその適用例をご紹介いたしました。

まだまだ実例はございます。興味深い技術やその適用実例があれば、また共有したいと思います。

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