今回は、MBA留学をお考えの方に向けて、企業派遣制度についてご説明したいと思います。
MBA留学の企業派遣制度とは、社員の教育を目的とし、企業が社員を大学に派遣してMBAの学位を取得させる制度のことを指します。
毎年、多くの日本人が企業派遣制度を利用して、留学を実現させています。
本記事では、①企業派遣制度の特徴やメリット・デメリット、②制度を利用して留学するまでのプロセスについて解説していきたいと思います。
企業派遣制度を利用したMBA留学とは?
先にも述べましたが、MBA留学の企業派遣制度は、企業が社員に提供する研修プログラムの1つです。
国内または海外の大学に派遣され、MBAの学位を取得します。
企業が独自にデザインするものなので、募集人数や募集要件など制度の詳細は企業によって異なります。
「MBA留学を通して、経営者の視点でビジネスを考えることのできる人材を育てたい」
「留学の経験を積んでもらった後は、海外の案件を請け負ってもらいたい(海外MBA留学に限る)」
これらのような狙いを、企業派遣制度を用意する企業側が持っていることが多いです。
さて、企業派遣制度を利用せずにMBA留学を行うことを、「私費留学」と呼び、企業派遣制度を利用した社費留学と対比して語られることがよくあります。
ここからは、「社費留学 vs. 私費留学」の切り口で、社費留学のメリット・デメリットをご紹介したいと思います。
社費留学 vs. 私費留学
ここから、社費留学と私費留学を対比させながら、社費留学の特徴を見ていきます。
どちらの留学方法にも、一長一短がありますから、特徴を理解した上でご自身にあった留学プランを検討してみてください。
社費留学は、企業から金銭的な援助が受けられる
社費留学の場合、企業の研修プログラムの一環として派遣されるため、金銭的な援助を受けられることが一般的です。
企業が肩代わりしてくれるのは、授業料、交通費、居住費(家賃等)、等が一般的です。
派遣者の英語力が、留学に耐えうるレベルに達していない場合、英語学習にかかる費用(予備校等の通学費や、TOEFL/GMAT等の受験費用)も補償してくれる企業もあるとのこと!
社費留学は、会社をやめる必要がない
働きながらMBAを習得できるようデザインされたプログラムは例外として、MBA留学のためには一度会社を辞める必要があります。
MBA留学には、短いもので1年、長いもので2年間の通学が必要です。
通学中は仕事ができなくなりますが、それだけの期間休職させてくれる会社はほとんどありませんので、私費留学生は、離職した上で大学に入学することになります。
つまり、MBA取得後にすぐに再就職(転職)を希望する場合、留学中に就職活動を済ませておかなければなりません。
一方、研修プログラムとして留学する社費MBAでは、当然ですが会社を離れる必要がありません。
卒業後の仕事のことを気にかけず、学業に専念できるのが、社費留学の大きなメリットかと思います。
さらに、会社を辞めていないので、在学中も給与を貰い続けられる場合が多いです。
私費留学生は在学の間無収入になってしまうことと比較すると、非常に恵まれた環境にいると言えるでしょう。
社費留学は、卒業後に出世コースを歩めることが多い
MBAは、「経営者の視点でビジネスを動かせる人材を育てるもの」です。
企業側としては、そういう人材になってほしいという願いを込めて留学に送り出していますので、卒業後は出世コースを歩んでいく可能性が高いです(保証はされませんが)。
留学期間中にビジネスから離れてしまうので、「出世レースからは脱落してしまうのではないか?」と心配される方がいらっしゃいますが、そうならないケースが大半かと思います。
もちろん、この点は私費留学との単純比較はできません。
私費留学よりも社費留学のほうが出世しやすい、ということではありませんので、ご注意ください。
社費留学は、卒業後のキャリアに制限がかかる
企業の研修プログラムの一環として留学するため、卒業後は派遣元の企業に戻って働くことになります。
ここで生じる問題が2つ。
①簡単には会社を辞められなくなる
「留学中に、自分の本当にやりたいことが見つかった!」
よく聞くご意見です。
その”やりたいこと”が派遣元で実現できないのであれば、転職や独立が必要となりますね。
事実、MBA留学から企業に戻ってきてすぐ(極端な例では、戻ってくることもなく)会社を辞めてしまったという事例をいくつも耳にしています。
しかし、大金を叩いて留学させた企業側からすれば、たまったものではありません。
このような問題に対処するため、留学生に逃げられないように、留学資金の返済義務を設ける企業が多いです。
「もし、留学から戻ってきて一定期間が経過しないうちに離職した場合、肩代わりした留学資金の〇%を返還すること」
上記のような文言が書かれた書類にサインさせられるのが一般的です。
”一定期間”というのは、企業によってまちまちですが、3年から5年を指定する企業が大半であるように感じます。
留学資金の返済に関するトラブルや裁判について:
<外部サイト>留学費用 3000万円の返還命じる 帰国後すぐに退職 東京地裁【2021年上半期 よく読まれた記事】
<外部サイト>留学後すぐに辞めた「証券マン」、会社持ちの費用「3000万」は返さないとダメ?
<外部サイト>3.3.18_帰国後すぐ退職したら留学費用3,000万円の返還命じられた、、の裁判で思うこと
②卒業後のキャリアパスは企業次第
せっかく留学したのですから、卒業後は留学で学んだことが生かせる職場で働きたいと思うでしょう。
そもそもMBA留学を志すくらいですから、「卒業後に満足いくキャリアパスを描けるかどうか」は留学生の最大の関心ごとの1つのはずです。
しかし、就職活動を経て自分のキャリアをある程度コントロールできる私費留学生とは異なり、社費留学生のキャリアパスは、”会社次第”ということになります。
- せっかくMBAを取ったのに、卒業後も留学前と仕事内容変わってないんだけど…
- 海外の大学に留学したんだから、英語を使ってグローバルに働けると思ったら、国内拠点で日本人の顧客を相手にする職に就いてしまった…
- 海外拠点に配属されたのは希望通りだったが、任される仕事は通訳と雑務ばかり。これってMBA必要か?
上記のようなミスマッチはよく起こります。
結果として、「これは、転職しかない」となる訳です。
>>>関連記事:MBA留学生は、卒業後にどんなキャリアを狙っているのか?
社内選考応募から留学するまで
ここからは、社費留学に至るまでの代表的なプロセスをご説明していきます。
どうやって選ばれるのか?
企業側の視点から見ても、MBA留学に行かせるのは相当にお金がかかります。
そのため、希望した社員の誰もが行けるわけではなく、毎年1名から5名程度の”選ばれし社員”が社費留学に派遣されるようです(派遣人数や頻度は、企業によって様々)。
社費留学を実現するには、派遣する社員を選ぶための”社内選考”を勝ち抜く必要があります。
社内選考については、公募形式(誰でも応募できる)の場合もあれば、推薦形式(経営幹部や人事部から社員に声がかかる)の場合もあります。
企業の最大の関心事は、「候補者を留学に派遣させることで、会社にとってどれだけの利益が生まれるか」なので、社内選考ではその点を中心にアピールしていくことになるでしょう。
会社からのプレッシャーに耐えよ
めでたく社費派遣候補生に選ばれたら、後は大学に受かるだけです!
しかし、ここからは社費留学生は特有の重圧に耐え抜かなければなりません。
それは、会社からのプレッシャーです。
私費留学であれば、どの大学に入学するかは個人の事由です。
もし希望の大学から合格通知を貰えなかった場合は、1年先延ばしにして再チャレンジ(いわゆる浪人?)も可能です。
しかし、社費留学の場合はそうもいきません。
「背中を押してあげるんだから、トップスクールに合格しろよ!ランクの低い大学への入学なんて認めません。」
「もう留学用の予算は取ってあるんだ。どこの大学にも受かりませんでした、なんてことは無いよね?」
こういった類の無言のプレッシャーを受けるそうです。
特に、海外MBA留学を目指すケースにおいて顕著です。
海外MBA留学となると、競う相手が世界中の受験生ということになります。
更に、日本人受験生が鬼門とするテストスコアメイクに苦戦した場合、「もし受からなかったらどうしよう…」という重圧と戦わなければならないでしょう。
まとめ:企業派遣制度を利用してMBA留学を目指す
いかがでしょうか。
今回は、企業派遣制度を利用したMBA留学についてご説明してきました。
冒頭にも述べた通り、私費留学・社費留学のどちらを選択するかに優劣は無いと考えます。
どちらの選択肢にも、一長一短がありますし、それらがどう影響するかは個人次第です。
慎重に比較した上で、ご自身にあったプランを立ててくださいね。
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