今回は、ウォールストリートジャーナルの気になる記事を取り上げたいと思います。
テスラのイーロン・マスクCEOが、ウォールストリートジャーナル主催のカウンシルで、「アメリカ企業には、MBAホルダーが増えすぎたことによる悪影響が出ている」とMBA取得者に対する批判を展開しています。
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MBAホルダーを輩出する各大学は、テスラCEOの発言に反論しています。
どちらの主張が正しいのかについて、決着をつけることは難しいのですが、本記事では双方の主張を眺めながら、「MBAの価値」について私なりの見解を述べていきたいと思います。
*アイキャッチ画像は、wikipediaより引用
テスラCEO、米企業のMBA化を批判
イーロン・マスク氏は、テスラ(Tesla, Inc.)の現CEOです。
彼は、「米国企業は、創造的に思考したり、顧客の本当に求めているものを提供することができていない」と指摘し、米国企業内の多すぎるMBAホルダーがその原因ではないかと批判しています。
中でも、経営陣にMBA取得者が多すぎると話し、「MBAホルダーの幹部たちは経営上の数字ばかりを追いかけていて、現場から目を背けている。製品やサービスそのものにもっと集中すべきだ」と述べています。
実際、米企業番付上位500社の1/3は、CEOがMBAホルダーだそうです。
JPモルガンチェース、ゼネラル・エレクトリック、ゼネラルモータース、キャピタル・ワン・ファイナンシャルのCEOは皆、MBAホルダーです。
イーロン・マスク氏は、MBAホルダーではありません。
大学側は反論
それを聞いて、MBAホルダーを輩出する大学は、以下のように反論しています。
- MBAで教えているのは、何も数字を追いかけることだけではない。製品やサービスの改善に集中することの重要性は、卒業生たちも理解している。
- ウォール街ではなく、起業やテクノロジーに興味を持つMBA生はかつてないほどに増えている。
- MBA教育と、米国企業のリーダーの創造性や顧客視点の無さには、因果関係は見当たらない。
確かに、米国企業の創造性の無さや顧客軽視の原因が、MBAホルダーが増えすぎたことだと結論付けるのは、飛躍していると感じます。
一方で、大学側が上記のように反論するのはある意味当然のことで、ポジショントークに聞こえなくもありません。
人材の偏りは、組織に悪影響
この議論によって、「MBAは、本当に経営の役に立つのか?」という根本の問題に決着をつけることは難しいように思います。
一方で、似たような人材ばかりを会社に招き入れると、多角的な目線や多様な思考が失われ、組織マネジメントに悪影響を及ぼてしまうことは事実です。
戦略を考えようにも似たようなアイデアばかり。思考の偏り方も似ているため、反対意見も出にくくなります。
MBAホルダーばかりが組織にいる、あるいは経営陣がMBAホルダーで満たされている組織においては、いくらかのデメリットが生じてしまいそうです。
Amazonは、名門MBAスクール率を下げようとしている。
Amazonは、名門ビジネススクールから多くの卒業生を採用してきましたが、トップスクールからの採用数を減らし、様々な学校から人材を採用するよう戦略を変えてきています。
Amazonと言えば、MBA生から絶大な人気を誇る就職先です。
Amazonをドリームカンパニーに掲げるクラスメイトは何人も知っていますし、Amazon側もMBAホルダーの積極採用の姿勢を見せてきました。
しかし、最近になってその方針を修正してきたようです。
MBAホルダー雇うなら、ランキングの高い大学であればあるほど良い、と採用担当者は思いそうなものですが、特定の大学の出身者ばかりが会社に増えてしまうことによるデメリットを避けようとしています。
その他大勢のMBAホルダーに埋もれてしまわないためには
MBAが学位の一つである以上、卒業生たちの能力や思考にある程度の偏りが出てきてしまうのはやむを得ないことだと思います。
同じような思考トレーニングを積み、経営のセオリーを学ぶ授業。
知識と技能が一定のレベルに達したかどうかをテストや評価で確認し、それに合格した者が卒業できるプログラム。
全科目で90点が取れる人材が優秀と見なされる。
例えば、「お金のことは全く分からないんだけど、マーケティングに関しては変態級に詳しくて、右に出るものがいない」みたいな尖った人材は生まれない。
ということで、MBAホルダーはその他大勢のMBAホルダーに埋もれてしまいがちだという事実にしっかりと目を向けていくべきなんだと思います。
他のMBAホルダーとひとくくりにされてしまわないために、「私は、○○に関してはクラスメイトには負けない」という尖った部分を見せることが重要。
それが結果として、希少価値の高い人材へ成長することにつながると感じます。
まとめ:そのMBAは、本当に価値あるものですか?
イーロン・マスク氏の論調に賛同する、MBA批判者の一人がこう話しています。
「マスク氏が指摘しているのは、経営などの薄っぺらな概念に集中するよりも、行動した方が見返りが大きいということだ。」
「私は学歴よりも行動を優遇する社会を支持する。企業に献身的な人は、ヘッドハンティングされた輝かしい経歴のMBA取得者と同じくらい、またはそれ以上に優れているかもしれない。」
経営学が薄っぺらいとは思いませんが、的を得た意見のように感じました。
MBA受験を始めると、「少しでもランキングの高い学校へ行きたい」と欲が出てきますが、それがより良い人材になるためなのか、見てくれを気にしているだけなのか(トップスクール出身の方が格好良い)、分からなくなることがあります。
MBA在学中も、「彼は優秀な生徒だった」と言われたくて、必要以上に学業成績や卒業時の能力認定にこだわってしまったりしてしまいます。
そんなことよりも、「MBAで学んで、私は前よりも行動できるようになったのか?組織を変えられる力はついたのか?」と自分に問いかけることの方が、何倍も大事だと思います。
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